実話系怪談話

 くるっぷで公開していた実家の実話系少し怖い思い出話を持ってきました。

霊感などない人間の怪談話ですので幽霊を見たり派手な霊障はありませんが、
何となく背中が薄ら寒くなる感じです。
実話ですので苦手な方は読まないようにしてください。


「閉まらずの天井板」



今は引っ越してしまった生家での実話。


祖母の寝室として使っていた一階の四畳半の部屋には半間の押入れがあった。

その押入れの天井板は電気修理の時に天井裏に上がるため、

板の一部が外れるようになっていた。

なぜそんな不便な所から登るような構造なのかといえば、

昔はそういう作りだったらしく珍しい事ではないようだった。



小さな頃はよくその押し入れの中に姉と懐中電灯を持ってこもり、

親には内緒の話をしたりあやとりをしたりして遊んだ。



そして今にして思えば不思議だが、

何故かその外れる天井板がいつも少しだけ開いているのである。



押し入れに向かって右下の天井の角になるのだが、

真っ黒な空間が奥へ広がっているのを感じて不気味に思っていた。

男の子なら天井裏を覗いたかもしれないが、

大人しく怖がりだった私と姉が覗く事は無かった。

記憶にある最初からそうだったので少し怖いなと思っても

特別に変だと思う事はなく、

なぜ開いているのか母に聞く事も無かった。



社会人になってから母の希望で実家暮らしをしていた姉妹と母は、

居間で無駄話を楽しむくらいには仲が良かった。

その夜は何故か少し気味の悪い体験話へと話が進んでいた。

金縛りあった時の話だの、下着が盗まれた話だの。



その時思いだしたと言わんばかりに母が言った。

「ばあちゃんが使ってた部屋の押し入れの天井の板、

 いつも少し開いてるでしょ? あれね、閉まらないの」

それに姉が答えた。

「ああ、あれそうなの?変だと思ってた」

……姉はアレを変だと思っていたらしい。

普通はそうだよね。私が少し残念な子供だっただけだ。



「昔はさ、開いてるのを見ると閉めたんだけどまたいつの間にか開いてんの。

何回閉めてもやっぱり開くんだよ。

あんな場所、誰も触らないし気持ち悪いから閉めるのやめたんだわ」

「あ~それでかあ。

 子供の頃からなんで開いてるのか不思議に思ってたんだよね」

不気味だとは思っても変だとは思っていなかった私は

「へえ~そうなんだ」とか適当に相槌を打って大人しく聞いていた。



その押入れは普段使いの物が入っていてその話の後も毎日使っていた。

何より母が普通の押入れだと思いたいようで特別扱いをしなかった。

確かに板が閉まらないだけで異音がしたり妙な気配がするわけではない。

だけどやっぱり不気味なのでその話の後は押し入れの天井を見ないようにしていた。

いっそ潔くその穴を確認してやろうという勇気も無かった。


姉も私と同じような気持ちだったんだろう。

それ以降、誰も押入れの話をする事はなかったし、

家が変わった今も思い出話すらしない。

電気の故障も起きなかったので誰も登る事も無かった。



誰が決めたわけでもないが我が家の禁句となった。



あの閉じない板は何かの通り道だったのではと思う。

実をいえば生家の町内には小さなお寺が五つもあった。

墓に囲まれた、言い替えれば死者に囲まれた地区である。

加えて小さいながらキリスト教会まである。

何かが通ってもおかしくないし、

何かが通るのは我が家だけではなかっただろうと思う。

そして生家の目の前に建っているのは

その五つの寺の中の一つであり、

墓を見ながら生活をしていた。



結婚して家を出るまで意地でも閉まらない天井板を見る事は無かったから、

変な物は見ていない。

だが旅館の押し入れを開けるのが怖いと思う、

ちょっとした恐怖症は残ってしまった。



それは姉も同じらしく、

引っ越し後のこれもまた年季の入った借家の押入れから

洗濯済みのタオルを出しながら、

なんか古い押入れっていやだよねと、ぼそっと言った。







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